ほっと湯WEB【福岡】
 
 「博多温泉 元祖 元湯」 ほか


○博多温泉

 博多温泉は一時は7軒ありましたが、
 現在は「富士の苑」(宿泊・日帰り)と「元祖 元湯」(日帰り)の2軒が営業するのみです。
 最近まで営業していた「清水園」は、2017年に廃業しています。
 元祖元湯の女将さんが、清水園はやめちゃうかもと言っていましたが(2011年)、やめたんですね。

 「元祖 元湯」は全国的に名を知られた住宅街の鄙び系「秘湯」です。


○博多温泉 元祖 元湯  福岡市南区横手3-6-18 092-591-6713 木曜休み

 九州温泉道の選定施設です。

 2011(平成23)年に訪問。
 当時80歳の今はおられない女将、安部幸子さんと
 入浴前20分(説明→質問の無限ループ)、入浴後10分(シャワーは別源泉発言があって、浴室に戻って確認する)
 再度番台で40分(感想→説明の無限ループと女将さんの昔話と、旦那・子どもたちの話、源泉見学)、
 計1時間以上も話し込んだ温泉、休憩室でほとんど休んでいないのに、滞在時間2時間以上に及んだ温泉です。
 現在は息子さん夫婦が運営されています。

 以下は女将さんを偲んでの当時の回顧です。


○元祖元湯へ

 立地的にJRだと笹原は博多駅から2つ目。西鉄だと天神から5つ目が井尻駅。
 行きはJR笹原駅(ささばる)から歩き(20分)、帰りは西鉄井尻駅へ(15分)。

 井尻駅だと井尻六差路越えてしばらく進み、正法寺のところを右曲がって
 しばらく行くと、右手にあります。

 13時前に着くと「本日終了しました」のお知らせが木の扉にかけられ、閉ざされています。
 女将さん(今年で80歳)が準備をされていたので、13時から入れるか確認すると、
 「1時に開けますよ、石鹸・シャンプー、タオルはないですよ」
 周囲を散策し、時間調整しました。

     

     

     

<泉源 博多温泉>

 ・道路反対側に「泉源 博多温泉」
 ・「よこて」の説明板

 「野を縦に 横手の川の流れこば 浮かべる鳥も ここに見ましを 大隈言道」

 <野を横に馬牽むけよほとゝぎす 芭蕉>を元にしたものです。
 芭蕉の那須野での句が記されていたので、おぉ!
 芭蕉のこの句については、こちらで私が解説しています。こちら

    

<奥博多温泉郷発祥の地 元祖 元湯 由来記>

 入口上に由来記の看板。

 「この地一帯は古くから大陸交易の地であり、、、地蔵様のたもとに井戸を
  掘ったところ、49℃という熱い湯がこんこんと湧き出ました。。。」

   

<享保飢饉地蔵縁起>

 「享保飢饉地蔵縁起」が掲げられ、地蔵様が祀られています。

 地蔵様以外にも石仏が多くあり、なぜと聞いたところ
 「井戸掘ったら道祖神などたくさん出てきたの」とのこと。
 刻まれている文字等は、みんな服を着ているので確認できず。

 福岡市HPの「享保の飢饉と横手」によると、

 「横手3丁目の元湯の入り口に3体のお地蔵さんが安置されている。
  この地蔵は享保の大飢饉で餓死した人々を追悼するために刻まれ那珂川の河畔に祀られた地蔵尊である。
  昭和45年河川公園建設の際、奥博多温泉の敷地に移され、その後奥博多温泉が横手中学に売却された際に
  3体を元湯に、残りの23体が篠栗へ移された。
  享保の飢饉とは、享保17年(1732年)この年は、前年の12月から雨が多く、
  閏5月は毎日のように雨が降り続き、6月にはウンカが発生、稲が腐り始めた。
  7月には牛馬に病気がはやり、多くの農耕用の牛馬が死んだ。
  その結果福岡藩では42万6千石のうち収穫できたのは、わずかに4万3千石余り。
  福岡藩の全人口32万人のうち6万6千人が餓死した。横手でもほとんどの子どもは餓死したといわれている。
  享保の飢饉で亡くなった人たちを悼む地蔵さんは、福岡市のあちこちに「飢人地蔵」として数多く祀られている。」
 
    
  
    

<正方寺>

 正方寺の近くに、古い神碑がありました。

   

<無限ループ>説明と質問

 入浴料を支払うと説明が始まりました。
 「小さくて狭いですよ。飲泉許可とっているので飲めます。」
 「うちは熱いです」とまず言われるのが定番のようですが言われません。
 女将さんが色々とご説明してくださるので、質問して〜の繰り返し。

 官舎を出て家を建て、自宅の井戸を掘ったら水温が28℃と冷たくなかったので、
 冷たい水を求めてもう少し深く掘ったら、温泉が出たとのこと(昭和41年(1966))。

 元湯で温泉が湧いて、地主の農家さんたちが、うちも温泉出るかもと
 清水園(昭和43年)さんや富士の苑さん(昭和46年)でも掘って温泉が出たとのこと。

 「でもうちは公務員だったから、当時のままです。」
 「営業終了後に息子がブラシで力強く掃除するもんだから玉石が傷んできちゃって。。。」

 「周りに家がなかった時は、西鉄の列車が走るのが見える田園の中の一軒家だったの」
 「売ってくれ」話は多く来たけど、拒み続けてきたとのことで、
 50年近く前のままの民家密集の住宅街の秘湯です。

 宿泊はだいぶ前にやめられ、日帰り入浴のみ対応されてきましたが、
 元警察官のご主人(安部隆典さん)が最近亡くなられ、
 女将さんが今年になって、長年の旅館業務の蓄積で足を悪くされて、入院・手術。
 退院後は、杖が必要になったので、無理のない範囲で対応しようとのことで
 2011年3月5日から午前の営業はやめ、営業時間は13時から17時まで(17時からは女将さんの入浴タイム)4時間限定となっています。
 (現在は息子さん夫婦の運営となり、13時から18時までの営業 13時-600円 15時-500円 17時-400円)

 家族風呂は、番台から遠く、足が不自由になったので、
 何かあった時にすぐかけつけられないので、安全のためやめたそうです。

 また、以前は小学生以下料金の設定もしていたそうですが、
 熱いので子どもの利用はお断りしているとのことです。
 (現在は子ども半額の料金設定あり)

 女将さんと話し込んでいる間に、地元客来られてサクッと脱衣所へ。
 一番乗りなのに、浴室一番乗りを逃しました。

<最初の源泉>(浴室内の水)

 「最初に井戸掘ったら、28℃で冷たくなかったので、もう少し深く掘ったら、
 冷たいどころか温泉だったのよ。」
 「最初の28℃の井戸は、浴室内の水あったでしょ、それ今でも使っているのよ。」

 湯上がり後、温泉談議でこの話を聞いて「えぇ?!」
 行ってきますと言い残し、番台から浴室へ戻り確認!!
 蛇口をひねると、井水にしては冷たくない!!
 分析に出せばこちらも温泉でしょう。

    

<休憩室>

 現在は、宿泊の受け入れは止めていますが、
 休憩室として使われている2階の部屋は、以前の宿泊部屋。休憩室は飲食持ち込み可。
 女将さん「昔は5人ほど雇っていて、自分もよく動いて階段の上り下りとかで足にきちゃって」
 2階の休憩室から外を見ると、住宅が密集しています。

<知事もよく来て囲碁を打った温泉、極楽湯の社長も>

 故亀井光福岡県知事が休日に来ては、温泉に入った後、休憩所で碁を打ち、過ごしていたそうです。

 極楽湯の社長さんも来ていたそうで、
 女将さん「自分のところで入ればいいのに〜」
 極楽湯社長「ここは湯が良いからね〜」。
 
    

<浴室>

 1人になって写真撮ろうとしたら、先客は1時間入浴されていたので、自分も1時間以上いて、
 熱い湯に入ったり出たりで、フラフラです。
 狭い浴室なので、地元客がおられると、面接必定です。
 先客によると、45年前とお湯は全然変わらないとのこと(45年も通っているんですね)。

 番台からすぐのところが男湯、右に回り込んで奥が女湯。
 浴室内に女湯から男湯へ出る戸があります(掃除用のためかな)。

 浴室に入ると硫黄臭がします。
 女将さん「お湯はまわしたりしていないから、源泉そのままだから、硫黄臭するのは、うちだけよ!」
 黄色の飲泉コップが2個ぶら下がります。無色透明、飲むと塩味。
 微量成分でヒ素を含有しているので、飲み過ぎには注意かと思います。

 後から来られた方はペットボトルに汲んでいました。

 タンクに溜めることなく、浴槽下の湧出地から源泉直投入しています。
 湯口は2カ所。湯口は泉温高め、大量湯口はもっと高め。
 どちらかが出ている時はどちらかは止まり、交互に出てきます。
 コンプレッサーの音が聞こえ出すと、大量湯口から大量の源泉がゴボッゴボッと爆裂!

 パイプの途中に穴が開いているので、そこからもびゅ〜!と大量の源泉が。
 湯口2カ所のパイプは別々で、動力揚湯と掘削自噴の2つの源泉から投入しています。
 源泉の井戸の深さは40m(分析書は50m)、お湯は地下2mのところまで自噴し、
 それを湯舟に投入しているのが、湯口の源泉と説明を受けました。
 自噴してあがってきた源泉を使い切ると、地下40mの源泉を汲み上げて湯舟に投入開始。
 その間に、自噴分がたまるので、今度はそれを投入。これを交互に繰り返しているのだそうです。
 動力引揚と掘削自噴(正確には井戸ポンプ使用とのこと)のコンビネーションという贅沢な湯づかいです。
 でも、自噴分だけ使っていれば、こんなに熱くしないですむのにと思ったり。

 ○分析書(平成21年11月27日)
  源泉名:「元祖 元湯」
  泉温:48.8℃ 湧出量:120L/分 pH:7.6
  成分総計:4.82g(各成分は下記)
  泉質:Na・Ca-塩化物泉
  陽イオン Li 1.1 Na 1107.9 K 21.6 Ca 719.6 Sr 32.8 計 2893.6
  陰イオン F 1.2 Cl 2664.9 Br 7.7 I 0.3 SO4 203.6 HCO3 15.9 計 1883.0
  非解離成分 メタケイ酸 41.8 メタホウ酸 2.9
  溶存ガス成分 遊離二酸化炭素 1.4 遊離硫化水素 0.00
  (遊離硫化水素0.0mgで項目があり、知覚的試験結果に硫黄臭の記載)
  成分総計 4.82g 蒸発残留物 5.190g

 ○影響を与える事項(平成17年博多温泉旅館組合)
  湧出地:福岡市南区横手3丁目6番18号
          源泉から浴槽までの距離:0m(浴槽下に源泉)
  湧出形態:動力揚湯(掘削深度50m)
  加水なし、加温なし、消毒なし、毎日換水の完全掛け流し。
  ※動力揚湯とありますが、掘削自噴(地下2m)との混合です。

 温泉水販売は10Lまで200円、20Lまで300円。10Lタンク400円で販売(との掲示)。
 ペットボトル2本までは無料。

    

    

    

<源泉湧出地>

 源泉パイプ直結投入、しかも浴槽真下が湧出地で、これもすごいなんて話していたら
 「源泉見たい?」と女将さんに聞かれたので、「見たい!見たい!」

 鍵をとってこられ、足を不自由にされているのに案内していただきました。
 湧出地は、浴室の真下です。源泉パイプとコンプレッサー配置です。

 安部隆典さんの写真が、源泉を見守るように飾られています。

     

 入浴後も、40分ほど女将さんと話し込みました。
 女将さんの湯のご自慢、発見から現在に至る歴史、苦労話、思い出話、遠方からの常連の方の話など
 レパートリー広くいくらでもしゃべり続けることができる女将さんでした。
 狭い浴室なので、常連客の面接は必定です。
 ここは、一人でゆっくりしたい方や、熱い湯が苦手な方は無理ですが、温泉文化に触れられます。


みなと温泉 波葉の湯  福岡市博多区築港本町13-1 092-271-4126

 源泉名「博多ベイサイド温泉」強塩の高張泉です。

 影響を与える事項は、加温、加水、循環ろ過、塩素。
 源泉ぬる湯のかけ流し浴槽(加温のみ)がありましたが、現在は、すべての浴槽で循環ろ過へ切替。

 「温泉資源の有効活用」掲示
 「源泉ぬる湯はろ過循環です。上部湯口から定期的な補給のみ行っています。
  〜(略)〜温泉資源の有効活用を行うべく、〜 今まで常時かけ流しを行っていた温泉水を定期的に補給する形に
  変更させていただきました。」
  
 繁華街に近く午前1時まで営業しているので、手軽に入浴(800円:土日祭850円)なら良いかな。
 港の夜景はキレイです。

     

  

    

     

   

     

     

     


博多ラーメン はかたや川端店  福岡市博多区上川端町9-151 092-291-3080

 24時間営業で、ラーメン一杯290円とは驚き。手軽に利用できます。

   

一優亭 冷泉店  福岡市博多区店屋町5-8 092-262-0477

 名物の「一口にら饅頭」は、肉汁ジューシー旨かったです。

  


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